新しい担保制度「企業価値担保権」とは?~中小企業の経営者が知っておきたいポイント~

皆さんは「担保」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?おそらく「土地や建物などを銀行に差し出してお金を借りる」、あるいは「経営者が保証人になってお金を借りる」というイメージが強いのではないでしょうか。しかし、近年、中小企業にとって新たな資金調達の選択肢となる「企業価値担保権」という制度が注目を集めています。この記事では、この新しい仕組みについてわかりやすくご説明します。

 

●企業価値担保権とは?

企業価値担保権とは、企業が持つ目に見えない価値――具体的にはブランド力、知的財産、顧客ネットワークなど――を担保として活用する仕組みです。これまで担保といえば不動産や機械設備のような「有形資産」が中心でしたが、企業価値担保権では「無形資産」も含めた企業の「総財産」を評価し、これをもとに資金を借りることができます。

 

たとえば、ある会社が独自の技術を持っている場合、その技術が稼ぎ出す将来的な収益力を担保として評価し、金融機関から融資を受けられるようになるのです。これにより、従来の担保では資金調達が難しかった企業にも、新しい可能性が広がります。

 

●中小企業にとってのメリット

この制度の最大のメリットは、中小企業が持つ独自の強みを資金調達に活かせる点です。中小企業の多くは地域に根ざした信頼関係や専門性の高い技術力を持っていますが、これらの価値が直接的な担保として認められることは少ないのが現状です。企業価値担保権を活用することで、こうした無形資産を資金繰りに役立てられるようになります。

 

また、土地や建物を所有していない企業や起業して間もないベンチャー企業でも融資を受けやすくなるため、事業拡大や新規事業の資金調達がしやすくなります。これにより、成長機会を逃すことなく事業を進めることができるでしょう。

 

●課題と注意点

一方で、この制度にはいくつかの課題もあります。一つは、無形資産も含めた企業の総財産の評価が難しい点です。たとえば、特許やブランドの価値をどのように測るのか、評価基準がまだ発展途上である部分があります。また、金融機関によっては、この制度への対応に慣れていない場合もあります。そのため、活用を検討する際には、事前にしっかりと調査し、信頼できる専門家に相談することが重要です。

 

なお、この制度は、現時点ではまだ運用されておらず、法律が施行される2026年末までにかけて詳細が決まります。

 

●最後に

企業価値担保権は、中小企業の新しい可能性を広げる画期的な制度です。ただし、そのメリットを最大限に活かすには、自社の無形資産を的確に把握し、金融機関との対話を進める必要があります。

 

このコラムでは概要をお伝えしましたが、具体的な内容や事例についてもっと知りたいという方は、本ホームページの「お問合せ」からぜひお気軽にご相談ください。皆さんの会社が持つ「目に見えない価値」を活かし、さらなる成長を支えるお手伝いができれば幸いです。

 

 

(橋爪 太郎)